2023年10月号(vol17)

「西東京市視覚障害者協会からのお知らせ(通巻17  2023年10月 )をお送りします。

「秋の日はつるべ落とし」と言う諺に相応しい季節となってきました。「秋の夜長」に読書にふける方も多くおられるでしょう。視覚障害が進み、直接に書物を読むことが困難にはなりましたが、こうして、図書館からご提供して下さるハンディキャップサービスに、朗読図書が有ったり、サピエ図書館や国会図書館のデイジー図書の充実など、色々な読書ができることをありがたく思っています。小説、教養書籍などは、勤めていた現役当時に比べて格段の読書量になっています。この様に朗読図書を聴いていると、妻からは、「ながら読書は便利だね! 明りをつけなくてもいいし、寝ながらでも聴けるんだもんネ!」とうらやましがられます。しかし、うっかりすると、寝落ちてしまい、いつの間にやら奥付も終わっていた李。皆さんの読書事情は、いかがですか?

さて、今月は、
1) 日本科学未来館で開催された「AIスーツケース」の実証実験に参加してきた体験の紹介。
2)情報ほっとラインをお聴きの皆様にお伝えしたいイベント情報。
3)東京都盲人福祉協会の今年度の代議員総会・多摩ブロック会 が開催された報告。
の3件の話題をお伝えします。 

1) 日本科学未来館で開催された「AIスーツケース」の実証実験に参加してきた体験の紹介。
視覚障害者が移動する際、同行援護のガイドさん、盲導犬を伴うなどがあります。
この度、この様な移動場面での支援にガイドさんや盲導犬に代わって案内をしてくれる開発中の「AIスーツケース」と言うものを9月22日に野口が実証実験として体験してきましたので紹介します。

まず、お台場に有る日本科学未来館と言うミュージアムをご存じですか? 2001年の開館で初代館長は、日本人初の宇宙飛行士・毛利衛さんでした。2代目の現在の館長は2021年に就任された、浅川智恵子さんと言う方で全盲の情報科学の研究者です。
様々な視覚障害者支援のシステムの研究開発に従事され、国内のみならず海外からも多くの表彰・受賞などで評価を受けておられ、2013年には紫綬褒章も受けておられます。工学博士(東京大学)、IBMフェローです。(フェローとは、偉大な研究者として、組織で尊敬される別格の立場の人と言う感覚でしょう)

さて、この浅川さんが現在取り組んでいるプロジェクトが視覚障害者移動支援装置の「AIスーツケース」です。
イメージとして、利用者(ここでは全盲の私)が、同行援護のガイドさんの肘を持って移動する、あるいは、盲導犬のハーネスを持っている姿勢を想定してください。
ここで、肘・ハーネスに代わって、飛行機で手荷物として持ち込める程度の大きさの一般的にコロコロと呼ばれる車輪が下部の四隅に付いたキャリーケースに似たAIスーツケースなるものを左前に置き、その持ちてを左手で持っている状態で始めます。右手側には白杖を手にしています。

持ちてを握ると、手の平の内側で、左右と上部の3方向に振動を感じるエリア、下部に軽く触れると移動の動作を始めるセンサーが手の中に包み込まれます。振動は、本体の左右移動、全身の動作を伝える機能を持ちます。少し前方の握った状態でも指が届く位置に誘導スピードを制御するボタンスイッチがあります。音声ガイドもあります。

今回の実証実験では、未来館の屋内から近くの駅でゆりかもめ「テレコムセンター駅」の改札口まで往復するコースを、この「AIスーツケース」で移動しました。途中には、横断歩道、エレベーター、障害となる駐輪場、歩く人々など、その間をガイドされて進みます。途中のモニュメントや、段差なども首に掛けたスピーカーから案内がありました。

目の前に人が居たり、障害物が有れば、回避の行動を取り、横断歩道では左右の確認を行っていました。エレベータについても、扉の状況、中に入ってから出る方向の案内と扉が開くまでの誘導も行われました。

私の感想としては、スムーズな使用感だった様に感じました。

ここからは誘導の仕組みなど少し技術的な話をします。
本体には外側に、位置情報を得るための受信装置、周りの様子を探索するセンサーとカメラ、駆動の為のモーターが組み込まれた車輪、内側に、制御用のミニコンピュータ、バッテリーが入っていました。
本体には、地図上の位置を判断する装置が付いています。基本となるのはライダーと呼ばれる装置で周囲の物体や壁などを認識し、自らの位置を推定します。
それに加えて、屋内の建物内の壁などに位置情報を伝える信号を発信する装置が設置されており、その信号を受信することでAIスーツケースが起動した際の初期位置を判断しています。
また、屋外では、一般的なGPSよりも高精度な衛星電波を受信する小型アンテナを用いた受信装置で自らの位置を推定しています。

今回の実験では普通に歩けば片道5分程度の距離で、屋外と屋内の混在した実験でした。走行するためのマップは予めデータとして準備する必要が有ります。AIスーツケースの移動するマップの情報を記憶し、そのマップ上での自らの位置をライダーとそれに連携する装置でもって認識します。
しかし、このAIスーツケースの優れたところは、位置を知る為のマッピングデータが登録・収集できれば、目的地まで安全に誘導してもらえる道具となると思いました。安全と言えば、盲導犬は有難いと思いますが、目的地を伝えても案内できないですから…

では、以下は野口の感想ですが、どの様な場面で、このAIスーツケースが効果を発揮するのだろうかと考えてみると、
例えば、初めて訪れた大病院での入り口で、これを借りて施設内を移動する場面、大学のキャンパス内を移動する場面、
空港ならば、空港駅やリムジンバスターミナルから飛行機に搭乗するまでのコースの案内や、到着した飛行機から他の交通機関に乗り換えるまでの誘導、
長距離フェリーやクルーズの船内移動の誘導などがあるかと思います。
いずれも必要な場面で借りる形態が想定されます。

個人保有については、高額なものになるでしょう。移動の安全の為には効果的ですが、何度も同じところを歩いていると、誘導が無くても慣れてしまい利用頻度が少なくなるかも知れません。
マッピングデータの追加が容易にできたり、中核となる出発ポイントと様々な目的地までのデータの共有システムによってデータダウンロードが出来れば利用の機会が増えるかも。

常の利用でなければ補助を頂き高額な買い取りとなるよりは、レンタルやリースも良いかもと思いました。

最後に、開発の担当者の方とのお話で思ったことは、利用する路面状況への対応範囲の拡充、混雑した場所での動作課題、電車内への移動場面への対応などがあり、更に改善と実証実験を積んで行くとのことでしたので、市場に出回るのは先になりそうです。

あ!、これを伝えなければ…  日本科学未来館では、視覚障害者の見学に対応した取り組みを進めています。館内案内のAIスーツケースの利用はもちろん、展示物を知る為の触れるミニチア展示、音声ガイドの充実、スマホを向ければ展示内容を音声でガイドする仕組みの実証実験など、今後、いろいろと取り組んでいくようです。是非、白杖を持って訪問してください。
また、この様な実験や、視覚障害者に向けたイベント情報を提供するメーリングリストが用意されています。
次のメールアドレス 【mlabtouroku@pz63.asp.cuenote.jp 】に空メールを送れば、登録用 URL が送られてきますので、ご興味ある方は、ご登録ください。

2)情報ほっとラインをお聴きの皆様にお伝えしたいイベント情報です。
●「ふれてみよう! 日常サポートから最先端テクノロジーまで」と称した視覚障害者向け総合イベント「サイトワールドが開催されます。案内のページには、「サイトワールド」は、視覚障害者に特化した世界で例をみない総合イベントです。是非、ご来場いただき、触れて、聞いて、話して、確認・納得していただけますよう…」と書かれています。
日時:2023年11月1日(日本点字の日)、2日、3日(文化の日)午前10時~午後5時(最終日は午後4時まで)
会場:すみだ産業会館サンライズホール8階(JR・東京メトロ半蔵門線 錦糸町駅下車 丸井錦糸町店内)

● 第21回西東京市市民文化祭に参加します。市内の多くの事業所・支援団体等の活動紹介&作品展示が行われ、西視協も障害に関する情報発信とするポスター参加を行います。多くの皆様のご来場をお待ちしております。
日時:10月28日(土)~ 10月30日(月)10時-17時(最終日 16時)・場所:柳沢公民館内会議室

3)東京都盲人福祉協会(以下 都盲協)の今年度の代議員総会・多摩ブロック会 が開催されました。開催された日は随分と前にはなりますが、この様子を西視協会員の方へ三原からお伝えします。
西視協は、都内の市区町村で活動している視覚障害者団体の一つです。それらの区市町村を都道府県単位でまとめている組織として東京都では「都盲協」があり、西視協は支部としての活動も行っています。
昨年度から西視協の会長を拝命いたしております三原は、都盲協の支部長、及び代議員としての対応をさせていただいております。
・6月19日(月)に行われた「定時代議員総会」にて、4月に実施された都盲協会長の改選選挙会で選出されておりました「小林 康雄(こばやし やすお)氏」(当時 都盲協常任理事・多摩市視覚障害者福祉協会長)が会長職に就任されました。併せて役員改選の年に当たり、新執行部の承認も行われました。
新会長からは「一人の願いはみんなの願い」を、大切に諸問題解決に向け、会員諸氏と共に歩んで参りたいと決意しております。と、都盲協の課題への取り組みと、都内の視覚障害者への呼びかけが成されました。
・7月29日(土)に開催された「都盲協 多摩ブロック総会(支部長会)」に参加して来ました。
都盲協40支部数の内、多摩ブロックには、17支部があります。今回、先に紹介しました都盲協の新会長の小林氏の出席も頂きました。総会では、始めに、江見ブロック長の挨拶に始まり昨年度決算と活動、今年度予算と活動計画について報告と承認が決議されました。
また、一部、役員の改選が行われ、西視協の三原は、監査の役割を担うことになりましたことをお知らせします。
江見ブロック長からの今年度の取り組みについての声明と多摩ブロックに関係する行事をまとめて紹介します。
「昨年は、新型コロナの関係で、周りを見ながら注意しながらイベントを開催してきました。今年は、一応5月に5類に移行したということで、普段通りにやりたいと思います。ただ視覚障害者の世界は距離も近く触れるイベント物も多いので、コロナウイルス感染拡大も少し気をつけながら皆さんと相談してイベントを考えて行きたいと思います。」
「都盲協の会長が多摩ブロック出身の『小林さん』が新会長になりました。23区と多摩ブロックの福祉の格差について小林新会長と連携しながら是正して行きたいと思います。」
次に、今後の活動予定をお知らせ致します。
「今年も8月に徒歩訓練を予定しておりましたが、『この猛暑の中は勘弁して!!』という意見が多く、9月以降の少し涼しくなってから行うことになりました。(後日談として、東村山市にある、造り酒屋の酒蔵見学を企画しているとの知らせがありました。日程が決まればお知らせします。)」
「11月1日(水)に『第55回東京都盲人福祉協会福祉大会(調布支部共催)』」が「調布市グリーンホール」にて開催致します。皆さん協力して下さい。」
「12月10日(日)忘年交流会(小金井支部主催)が計画されています。小金井支部の皆様」が、楽しい「交流会」を準備して、会員皆様のお越しをお待ちしております。」
「令和6年1月・2月頃の学習会」など、その他の多摩ブロック事業については、決定次第随時お知らせいたします。見るだけ触るだけでなく体験できる物も含めて会員皆様が参加したいと思える様な学習会を考えたいと思います。」
尚、江見ブロック長に於かれては、西視協にても顧問として様々にご助言などを頂いております。
西視協の入会や都盲協についてのお尋ねは、会長の三原(042-463-6765)までご連絡下さい。

▼最後に、「情報ほっとライン」をお聴きの皆様へ、西視協からのお誘いです。
 西視協では、会員に限らず、誰でも参加を歓迎する交流会を定期的に開催することを年度初めの定期総会で決定しました。次回以降の予定は、12月3日(日)と年明けの2024年3月を予定しています。
開催場所:西東京市障害者総合支援センターフレンドリー、午後1時30分からとなります。是非ご参集下さい。
携帯端末の便利なアプリ情報の紹介、視覚障害者支援に関する意見交換などを行いたいと思っています。
市当局への要望や制度についてなどが出てくれば、視覚障害者の声として対応したいと思っています。

■以上、今月の話題を三原・野口から提供しました。